今回の話はこのブログの一つのゴールとなる話です。
55歳で教員を退職し、紆余曲折を経て3年かかってシステムエンジニア兼 プログラマー兼デザイナーとして内定をいただくことができました。
まさか、自分がエンジニアとして仕事ができるようになるなんて3年前には思ってもいませんでしたけど、今それが現実になろうとしています。
今回はその受託システム会社から内定をいただくまでの経過をお話ししていきます。
転職サイトが運命を変えた!
最初のきっかけは、「type」という転職サイトに登録したところから始まります。
Typeへの登録話は別記事に委ねますが、登録してから2週間後の7月中旬、一通のスカウトメッセージが届きました。
Typeのスカウトはとてもエンジニア寄りで、ほとんどの場合が書類選考パスの面接へのお誘いになります。
私はそれまでTypeを利用していくつかのSES企業から内々定をいただいておりました。
内定といえないのは、SES企業の場合、プロジェクト先が決まらないと入社が決まらないという慣例がよくあるからでした。
それはそうです。内定を出して入社が決まっても、プロジェクト配属が決まらなければ、その人材を宙に浮かせてしまうことになり、SESにとったら一円の儲けにもならないだけでなく、配属先が決まらない社員を抱えてしまうリスクをはらんでしまうわけですから。
特に自分のような50代後半の人間がスムースにプロジェクトが決まるかどうかはとても不安でした。
また、決まったとしても、長くて1年、下手すれば数か月ごとにプロジェクト面談を続けなければならず、あまり正社員のメリットを感じられないということが予測できたのでした。
では、SESでない受託や自社開発の企業を選べばいいんじゃない?という意見もあるかと思います。
しかし、現状自社開発企業は求めるスキルレベルも高く、コーディングテストやポートフォリオの提出が求められるだけでなく、年齢も30台前半までに限られるのが常です。また、スタートアップといわれる企業が多く、カルチャーフィットしないというのもあります。
50代オジが入り込む余地は全くありません。
では受託企業は?というと、これもSIerといわれる大手が多く、60歳定年を敷いている伝統的な理系のIT企業文化であり、文系50代オジが入り込む余地がないだけでなく、秒で書類カットされます。
ですのでエンジニアへのわらしべ長者戦略はとにかくSES企業で業界歴3年の実務経験を積むしかないと思っていたのです。
そんなところに受託企業からスカウトが来たのですから、喜ばないわけはなかったのです。
しかし、はやる心を抑えてすぐに返事は出さないで応募締め切りギリギリまでじっと我慢する戦術をとったのでした。
応募ガマン戦術とは?
就活は恋愛と似ているとよくいわれます。
欲しがっている時は相手は見向きもしないのに、無視し続けると気になる存在になるのはよくありますね。
就活サイトでも同じで、募集企業はスカウトを出したのに何の反応もないまま掲載締め切りを迎えてしまうと焦ってくるものです。
ぎりぎりを狙えば、より興味を持ってもらい、採用へのハードルがぐっと下がると訓練校のキャリアカウンセラーから聞いていましたので、その戦術をとってみたところでした。
その間、約3週間。
ほんとはすぐにでも応募したいのに、ぐっとこらえて企業研究をして時を稼ぎ、お盆明けの募集終了間際にメッセージを出したのでした。
翌日、午前中のうちに、企業から返事が届きました。
そこには面接の予定日の調整がもう載っていたのでした。
面接前のリサーチ(フィールドワーク)
私は面接前には必ず企業の所在地まで直接出かけて、街の雰囲気や電車の乗り継ぎが諸時間を確認するようにしていました。
その企業は東京近郊にあり、自宅からは70分ほどでしょうか。
ちょっと遠いかとも思ったのですが、朝の通勤は都心とは逆方向、殺人的な満員電車が避けられるだけでもストレスは少ないのでいいかな、と思いました。
最寄り駅は思った以上に学園都市で、緑が多く落ち着いていて仕事をするのにはちょうどいい感じです。
リサーチはとっても大切で、これから自分が通うかもしれない職場の周りの雰囲気を気に入るかどうかでストレスのかかり具合が変わってきます。
また、街を歩いた感想なんかを面接でちょっとはさんだりすると、それだけでも印象はアップすると思っていたからです。
まあ、あざといというよりも、自分は考古学という学問をしていたせいか、フィールドワークで現場を訪れるということが当たり前のように身についていたこともあります。
面接当日
当日は土曜日の午後という時間でした。
平日の提示もありましたが、訓練日と重なることから調整していただき、土曜日の午後ということになりました。
翌週の平日も2日ほど全日可の提示をしたのですが、土曜の午後という回答をいただいたので、邪推ですができるだけ早く面接したかったのかな?と思う展開でした。
面接には社長と会長の2人が同席するという形で始まりました。
社長は60代全半くらい、会長は女性で60代後半くらいの方でした。社長からは会社の概要や仕事の内容、仕事の進め方などの話が中心でした。
会長からは家族のことや給与のことなど事務的なことを聞いてこられたので、労務管理関係は会長が仕切っているのかな、と感じたところです。
社長から質問はないかと聞かれたので私はリサーチしたことをもとに、企業カルチャーに関する部分を中心にいくつか質問しました。
・創業以来、東京近郊でビジネス展開している理由は。
・デザインが得意な人がいないと伺ったが、スマホアプリの開発が増えている中でUI/UXはどのように折り合いをつけているか。
などです。
事前に要してきた質問は一つだけにして、あとは社長の話の中で出てきたワードを拾って疑問に感じたことをぶつけた感じです。
面接では対話を重視「聴く」「訊く」「利く」
私は人と話をする時は、自分の話と相手の話の割合を1:2に置くようにしています。
- 第一段階は「聴く」で相手の話を傾聴すること
- 第二段階はその相手の話を膨らませるために訊ねること
- 第三段階はお互いが利するという価値観を持たせること
これは大学院で学んだダイアログの手法の一つで、学習科学の分野で最新研究からわかってきた質の良いコミュニケーションを生み出す方法です。
これが面接ではとっても効果的で、特に自分よりも先輩の経営者層の方々と接する際には良い効果を生みだしてきました。
こんなところで大学院時代の研究が活きるとは思っていませんでした。
歳を重ねれば重ねれるほど、他者に対して謙虚になれるかどうか、相手をリスペクトできるかどうかが試されてくることを実感しています。
面接では、どちらの方も穏やかでギラギラした感じはなく、社員が働きやすい環境を大切にしていることは肌感覚で分かってきました。
社員数が十数名の会社でしたので、一人ひとりと真摯に向き合っていることがうかがえとても好印象です。
「この会社に入れば、自分は頑張れそうだな・・・」面談を進めながら素直にそう思える自分がいました。
ー面接終了ー
面接はちょうど1時間で終了。
会長はお茶も出さなかったと恐縮して、冷たいペットボトルのお茶をお土産にくださいました。
挨拶を済ませて、駅に戻ってきた時、駅前の公園の木々の緑の香りが心地よかったのが印象的でした。