2023年4月にnoteに掲載したコラムを抜粋しています。
文筆活動の一つとして取り組んでいます。
はじめに
リアルイベントの臨場感は格別
4月22日に行われた第2回デジLIG リーダーズ講座に卒業生枠で参加してきました。
在学中はリアルイベントに参加できなかったので新鮮な感覚です。
やはり生の会場は臨場感豊かでいいものです。
とても良い刺激をもらました。
では、その感想と内容についてみなさんにシェアし、これからの学びにつなげてもらえたらと思っています。
結論 デジLIG生は必聴必見
講座を通して見えてくる、目指すべきWebデザイナーの姿
まず、結論から申し上げますが、デジLIG在校生はこの講座はぜひとも受講してほしいと思います。
講座を通じて、自分がなりたい目指すべきWerbデザイナーの姿が見えてくると私は考えます。
もう少し具体的に申しますと、Web業界という狭い領域だけでない社会人としての汎用的な力を身につけるきっかけになるということです。
デジLIGで学んでいる方々は、ほとんどがサイト制作のスキルを身に付けるために入学してきたと思います。
それは当然の姿ですが、実はそれだけで本当に良いWebデザイナーになれるのだろうか?という現実を本講座では受講生に問いかけてきます。
デザインスキルだけでは測れないWebデザイナーとしての力、そんな新しい視点を今回の講座では示してくれました。
では今回の講師、QUOITWORKS代表のムラマツヒデキさんの講義を報告いたします。
ポータブルスキルの重要性
Webデザイン界のトップリーダーで、最近はYouTuberとしてもお馴染みの、ムラマツヒデキさん。
講義中の雰囲気はざっくばらんでフランクな感じでしたが、内容はとても刺激的でスパイスを効かせたものでした。
今回の講座内容で大きく時間を割いて話されたのがポータブルスキルについてです。
ポータブルスキルとは、職種の専門性以外に業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキルと定義していました。
私なりに言いかえますと、Webデザインに限らず社会人として必要な課題解決への対応力や対人交渉力やリーダー性、協働性など汎用的な資質能力(コンピテンシー)を指しているととらえました。
講義中は、力のあるWebデザイナーとはどういう存在なのかを、これからWebデザイナーを目指す人たちに理解してもらいたいというメッセージが、ムラマツさんからガンガン伝わってきます。
特にデザイナーに求められるが、デザイン力+ポータブルスキル(伝え方・論理思考・交渉術)だということ。
これらの項目については事例を交え具体的に述べられていきました。
受講生は20~30代の若い方々が大半だったので、これからのキャリア形成に大きく刺さる内容だったと思います。
私は超ロートル世代ですので、少し俯瞰した立場で話を聞いていましたが、それでもたくさんの学びがあり、Webデザイン業界への誤解が解けたことが何よりも嬉しいことでした(事情は後述します)。
話の中で特に印象的だったのは、「交渉事つまり人と人との対話にはストレスがつきものだとの前提に立つ」という言葉です。
デザイナーを目指して学んでいるデジLIG生は、PCに向き合って良いプロダクトをつくることに全振りしたいと考える方々が多いと思います。それは正しいことだし、自分もそういう思いで学んできました。
しかし、デザイン力だけでは結果的に良いアウトプットにはつながらないということを指摘する内容でした。
デザインの本質は、顧客の課題解決ですから、クライアントと向き合い傾聴し、つくったデザインを論理的に説明し、納得させる力が大切だということです。
併せて、仕事は自分一人で解決することはほとんどないわけなので、チームの中の一員としてどう協働性を発揮するかが問われるということでした。その過程ではストレスはつきものでどう付き合うかがポータブルスキルで問われてくるという内容でした。
学びの共同性がデザインにもたらすもの
ムラマツさんから伝わるアクティブラーニング手法
ムラマツさんの話を聴きながら、ちょっとインスパイアされたことがありましたので、少し話がそれるのですが皆さんとシェアしたいと思います。
それは私が教師時代に知見を得た「学びの共同性」という考え方です。
いわゆる「アクティブラーニング」とも言いかえられますが、資質能力(本稿でいうポータブルスキル)の獲得手法の一つとして知られています。
具体的には、”話し合いではなく、きき合う関係を築くこと”に重きを置く手法です。
”話し合い”はお互いの意見を主張し妥協点を見出すと方法ですが、必ずしも合意形成がなされるわけではなく、場合によっては対立関係のまま終わりを迎えることもあります。
一方、”きき合い”では、自分の主張を押し通す話し方(最近流行りの論破?)ではなく、相手の話を傾聴するすることから合意形成を図っていくという方法で相手へのリスペクトを大切にしている点が特徴です。
山形大学大学院の森田智幸准教授は、「きく」には3つの段階があり、「聴く」→「訊く」→「利く」のプロセスがあることを指摘しています。
「聴く」は相手の話を傾聴すること、つまり自分事としてとらえて共感しながら耳をたてるという聞き方です。
「訊く」は、自分のフィルターを通して相手に疑問点を尋ねるきき方です。
「利く」は、相手の考えを取り入れることで新しい着想がおこり、それが相手にも良い影響を与えると言われています。
ムラマツさんの話からは、デザインの現場で感じた具体的な事例を交えて、この”きき合う関係づくり”が実践されており、ポータブルスキル獲得にこの方法論は有効であると感じたところです。
ムラマツさん自身は、多くのビジネス系の啓発書からの転用だとおっしゃっていましたが、他分野から知識を”転移”して自分のものにし実践されていることに驚くしかありませんでした。
私は心の中でうなずきながら、学びの理論とデザイン現場の親和性が高いことを実感したのです。
ポータブルスキルの獲得にむけて
日本の教育現場では今アクティブラーニングがどんどん進められています。
少なくとも5年後には、上記の学習理論にもとづく対人スキルを身につけた世代が社会に出てくることになります。
この潮流は世界では既に20年前に始まっており、学習科学の分野で日本は周回遅れとの烙印が押されてきましたが、ようやくその萌芽がはじまってきました。
現在のデジLIG生の方々はデジタルネイティブなZ世代と言われていますが、このアクティブラーニングによる対話スキルは義務教育の中では学んでいない世代です(まあ、どの世代もそうですが…大学で学んだ人がいるかもしれませんけど…)。
つまり、私たちは自らの手で学び、アクティブラーニングによる対人スキルを獲得していかなければならないといえるのです。
ムラマツさんの講義をきっかけに、ポータブルスキルについて理解を深め、「今どのスキル要素が必要になっているのか」その自覚を持って仕事にあたることが重要になると思われます。
この波に乗り遅れることなく、自分をアップデートしていかなければならないと改めて感じたところです。
Web業界における共同性とは
「ありがとう」から始まる関係性の構築
ムラマツさんは、ポータブルスキルの帰結点は、人と人との信頼関係を築くことにあると説き、「ありがとうと言い合えること」が良い仕事を生み出すと力説していました。
私はこの言葉に心を動かされました。
それは共感できる過去の体験があったからです。
まだまだ駆け出しのコーダーの私ですが、以前、委託元のディレクターと仕事をした際に、「Web業界ってこんなところなの?」と違和感を覚え、仕事に対して大きなストレスを感じたことがありました。
原因はそのディレクターの言葉づかいや態度に、明らかにフリーランスに対してマウントをとろうとする姿勢が見えたことでした。駆け出しだった私に対して、「時間をとって教えているんだ」という意識があったのでしょう。悪気はなかったのかもしれませんが、結果的にその会社さんとはお付き合いすることは控えるようになりました。
しかしその後、私の中にはWeb業界に対する葛藤が続きました。
「フリーランスという立場は、仕事をもらう受け身の立場なので、こうした高圧的な言動も甘受しなければならない!」
「委託元のマウンティングを否定した自分はフリーランス失格だ!」
と自虐的になってしまっていったのでした。
そんな思いを引きずって迎えた今回の講義でしたので、ムラマツさんの話は私にとっては一筋の光明のようにうつりました。
ムラマツさんは私が抱えた葛藤を打ち消すかのように、「ありがとうといえる関係性の構築が大切である」と説いたのです。
さらに、高圧的に振る舞う会社との付き合いは後々大きなリスクとして返ってくることになるから、仕事を受けるべきではないとすら言い切り、私は大きな勇気をもらうことができました。
これまで幾多の”修羅場”をくぐってこられたムラマツさんだからこその説得力のある話でした。
汎用性のある資質を大切に
自分が遭遇した体験はおそらく業界の主流の考えではなかったのでしょう。
講義を通じて、私が抱えていたWeb業界への誤解が解け、モチベーションが上がってきたと感じています。
相手をリスペクトすることの大切さは、どの業界でも変わらない汎用性のある資質であることを再認識しました。
逆に、もし講義を受けていなかったら、今も誤解と葛藤を抱えたままでいたのかもしれないと思い、ぞっとしてしまいます。
この講義との出会いには感謝しかないというのが率直な感想です。
クライアントへの傾聴、外注先を含むチームへのリスペクト、それが目指すべきWebデザイナー像であること、ビジネスを成功させる秘訣はポータブルスキルの獲得にあること、実に多くのことを学んだ充実した2時間でした。
最後に
後半のSNS戦略は非公開部分でしたので割愛しますが、一言でいえば、経験に裏打ちされた実践話で、情報を得られただけでもデジLIGに通って良かったという内容でした。
質疑応答でもこのSNS戦略に関する内容が多く、皆関心が高いようでした。
私にとって大きな気づきだったのが、Twitterがビジネスには有効だという話をされていたことです。
今までの自分は、ビジネス=facebookというイメージだったのですが、拡散力の点でTwitterが有効という話は目からウロコでした。
講義後は交流会もありましたが、私は後に予定があったのですぐに退出してしまいデジLIG生の皆様と情報交換ができず少し悔しい思いをしております。
でもこうしてnoteでの情報発信を通して多くの方々に見てもらえる機会をいただけたことを嬉しく思っています。
卒業した後も、デジLIGの講義で勇気をもらうことができて本当に感謝しかありません。
講師のムラマツさん、運営スタッフの方々、どうもありがとうございました。
機会がありましたら、また参加させていただきたいと思います。
これからもデジLIG卒として人間力を高めたデザイナーになるべく精進していきたいと考えています。